台座の歴史

Baby Green, 1991/93, patinated bronze, 46 x 23 x 16,5cm. © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2022./ Photo: Philipp von Matt.

クール・ビュントナー美術館では展覧会「台座の歴史」で彫刻をテーマにとりあげます。当館のコレクション作品からなる本展は、彫刻と言ってもその定義が現在いかに延長・拡大されているのかを記録するものになるでしょう。歴史的に彫刻は高い台座のうえに据えられるかたちをとってきました。意識的に台座が解体され鑑賞者が加わることで、彫刻は高尚なものではなくなり、一般社会へと取り込まれていきました。ビュントナー美術館の増築された新館で行われる「台座の歴史」展では過去約80年のあいだに制作された彫刻をとりあげ、彫刻が経てきた変遷を明らかにします。各展示室は多様性・住居・時代・絵画彫刻といったテーマごとに分けられています。

本コレクション展には28人の作家と芸術家カップル1組による33点が出品され、新館地下1階の4室で展示を行います。

「多様性」をテーマにした展示室の入口に展示されているのはミルコ・バゼルジアによるプロンプター室であり、本展タイトルの象徴にもなっているものです。来訪者は台座のようなかたちをした箱のようなプロンプター室から彫刻の歴史がそっとささやかれるように思うことでしょう。ここからはエヴェリナ・カヤコブ、マルティン・ディースラー、ベサン・ヒューズ、ヴァクラフ・ポザレク、イュルク・シュトイブル、ノット・ヴィタルの作品が続きます。これらの作品の展示室での設置のしかたや素材はこれ以上ないほど多様性に富んでいます。素材は木、ブロンズ、毛皮、テラコッタ、ネオン、水が用いられ、ロマン・ジグナースの彫刻では時間といった事柄までが重要なポイントとなっています。エリカ・ポドレッティによる鳥に似たオブジェは床から離れて浮かんでいます。

第2展示室でのテーマは「住居」です。ガブリエラ・ゲルバー&ルーカス・バルディリの家畜小屋のように簡素でシンプルなねぐらとしてであれ、フランツ・エッゲンシュヴィラーの小さな寺院のように静かな宿や信仰の場としてであれ、家は守られることや隠れることの必要性を表すものなのです。

ドミニク・ツェンドナーの捨て子は、第3室のテーマ「時代」にあわせ、はるか遠い未来から人新世と呼ばれる人類が作り上げた地質時代を振り返っているかのようです。現代から残っていくのは一体何でしょうか? コルシン・フォンタナ、ダニエル・スペーリ、ディーター・ロートの作品は有機的素材から作られており、変容・分解のプロセスが作品の一部をなしています。芸術も生命のようなものであり、そして時間のリズムにさらされ、綿々と変容していくものだというのがロートの信念です。

「絵画彫刻」をテーマとした第4室ではアウグスト・ジャコメッティの絵画作品2点がアドリアン・シャイスによる大型平面作品に対置して展示されています。シュテファン・グリッチュは絵具を立体的に扱い、絵画と彫刻の境界がぼやけるような作品となっています。ヒューゴ・スーターの作品はショーケースのような箱に入った素材のアッサンブラージュが花束の絵になっています。最後はパスカル・ヴィーデマンの作品であり、ポリエステル樹脂に漬けこんだ洋服が何百年と続く自画像絵画の古い伝統と対話するように展示されています。

出展作家:Mirko Baselgia, Flurin Bisig, Evelina Cajacob, Markus Casanova, Martin Disler, Franz Eggenschwiler, Corsin Fontana, Gabriela Gerber & Lukas Bardill, Stefan Gritsch, Hermann Hubacher, Bethan Huws, イケムラレイコ, Sara Masüger, Erica Pedretti, Vaclav Pozarek, Dieter Roth, Christian Rothacher, Adrian Schiess, Roman Signer, Kurt Sigrist, Matias Spescha, Daniel Spoerri, Jürg Stäuble, Hugo Suter, Not Vital, Pascale Wiedemann und Dominik Zehnder


出典:クール・ビュントナー美術館

 

Bündner Kunstmuseum Chur(クール・ビュントナー美術館)
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