高松市美術館コレクション+(プラス) 木村忠太とこぼれる光のなかで

Pacific Red, oil and tempera painting on burlap, 160 x 200 cm © Leiko Ikemura 2006. Photo: Studio Ikemura

出品作家:木村 忠太, イケムラレイコ, 石田 尚志, 大岩オスカール, O JUN, 岡田修二, 小川真司, 小川早百合, 加納光於, 工藤哲巳, 小林武信, 杉本博司, 曽谷朝絵, 堂本尚郎, 流 麻二果, 日高理恵子, 丸山直文, 横内賢太郎, 倉本秀彦, コンドウアキ

 

 今から60年ほど前の1953(昭和28)年のこと。高松出身の画家木村忠太(1917-87)は、オランダ船で横浜を出港し、2ヶ月かけてマルセイユに到着するとパリに居を定めました。以来亡くなる1987(昭和62)年までフランスに留まり、光を探求し続け制作に打ちこみました。「光」への木村のこだわりは、抽象(アブストラクト)絵画の趨勢のなかにあって、孤高な挑戦に映ったかもしれません。しかし、「内なる光」を生み出した木村忠太の一生は今もって、絵画や光に対する深遠なる問いを発し続けているとも言えます。
 さて、本展覧会で紹介する作家たちは、木村と同じくフランスに渡った堂本尚郎(1928-2013)や工藤哲巳(1935-90)、そして加納光於(1933-)以外は、みな戦後生まれです。日系2世としてサンパウロに生まれた大岩オスカールのほか、イケムラレイコ(ドイツ)、杉本博司(ニューヨーク)など、活動の拠点も様々であり、世代的にも木村と接点のある者はいません。しかし、ご覧いただく作品それぞれに、木村の言う「混迷を破るもの」として美術のあり方や可能性を感じることができます。水と光がゆらめく曽谷朝絵の絵画、石田尚志の差し込む光に委ねた絵画行為の痕跡など、現代を生きる作家たちの光をめぐる冒険があります。それらはまばゆい光というよりも、こぼれていくような有機的な光であり、揺らぐ映像のように私たちの身体感覚をゆるやかに満たしてくれるでしょう。
 また、香川県在住の藏本秀彦が描く、東日本大震災以降、テーマに掲げる「FUKUSHIMA」の新シリーズ《それでも木漏れ日は》や、同じく東日本大震災が制作のモチーフとなった近藤亜樹監督・脚本よる映画《HIKARI》、そして展示室一面を覆う曽谷朝絵の映像インスタレーションなど、ゲスト作家による魅力的な展示が広がります。

 

高松市美術館
〒760-0027
香川県高松市紺屋町10-4 

 

出典: http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/museum/takamatsu/event/exhibitions/2017_tenji/ex/ex20180217.html