境界線、そして交差する点へ ― アーツ前橋コレクションから考えるコスモポリタニズム ―

Island Girl, 2008, pastel on paper, 42 x 30 cm © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2022./ Photo: Shigeo Muto.

人間が土地を移動することは一種の習性といえるのでしょうか?古来よりお伊勢参りや四国のお遍路をめぐる旅から、近年では行先未定のバックパッカー体験記がベストセラーとなったように、“未知の世界を知りたい”という好奇心を芽とした移動は、生物学にみても同じく移動をする渡り鳥や魚類の遡上・回遊とは一線を画します。

本展では、自らが暮らす場所の地層を掘り下げた髙橋常雄、田中恒、髙橋武の視点から出発し、インスピレーションの源泉を求めて国境を越え海外へ渡った、深谷徹、中村節也、狩野守らによる表現の飛躍を、アーツ前橋のコレクションから再検証します。こうした物理的な移動に加え、詩的な空想の世界へと旅をした東宮不二夫、正田壤、武澤久の作品や、アーツ前橋の多文化共生プロジェクト〈イミグラジオ〉など約40点の作品・資料を展示します。

地理的・時代的・社会階層的な〈移動〉によって見えてくる複層の世界は、すでに私たちの暮らす場所にも存在しています。日常から非日常への越境体験により生み出された作品を通して、未知の場所へ行きたいと願望を新たにしたり、自分が今いる場所への思いを一層強くするかもしれません。以前と同じ世界が戻らないとしても、私たちの視点そのものを絶えず刷新することで、皆さん一人ひとりにとって特別な意味を持つ場所へ思いを馳せていただける機会となれば幸いです。

出展作家:池田政治、イケムラレイコ、狩野守、川隅路之助、近藤嘉男、清水刀根、正田壤、髙橋武、髙橋常雄、武澤久、田中恒、東宮不二夫、中村節也、南城一夫、深谷徹、福田貂太郎、森亮太

出典:アーツ前橋

 

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