フラッシュバックス ― シリーズ16 イケムラレイコ

Light Face, 2021, cast murano glass, ca. 22,5 x 27 x 19 cm. © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2022.

2022年12月23日から2023年1月7日までBUILDINGBOXにて日本生まれでスイスに帰化した美術家イケムラレイコ(1951年津市生まれ)のガラス彫刻「Light Face」(2021年作)が展示されます。

ガラスのでこぼことした表面に現れるほとんど表情の読み取れない顔、そこにはおだやかで静かな存在感が宿っています。この横たわった頭部は、軽やかなディティールからかすかに人間らしさを見せている一方で、謎めいた深淵に棲む海の生き物のようにも、あるいは華やかな神話上のキャラクターのようにも見えます。透明のガラスを透過してくる光は色彩のニュアンスとたわむれあい、その反射によって黄色を照らしだし、空間へと広がる素材に生き生きとした立体感を与えています。1990年代以降のイケムラ作品に登場する「横たわる頭部」は、陶やブロンズなどさまざまな素材や媒体を用いて表現が続けられ、幅広く追求されてきたテーマです。

ムラーノガラスを用いた本作はBUILDINGとヴェネツィアの芸術ガラス工房ベレンゴのコラボレーションから生まれたたいへんユニークな作品です。工房との協働は「Dalla sabbia, opere in vetro(砂から生まれるガラスの作品)」シリーズを機に始まり、BUILDINGBOXの2020年展覧会シーズンを特徴づけるものとなりました。

「Light Face」はフランク・ベームがキュレーションした「Leiko Ikemura. Before Thunder, After Dark(イケムラレイコ 雷のまえ、暗闇のあと)」にて新作としてBUILDINGで限定公開されたものです。2021年9月4日から12月23日まで開催されたこの個展では1980年代から現在までに制作された50点の作品を一堂に集め、イケムラが追求してきた芸術を広く紹介するものとなりました。

本展はアリス・モンタニーニのキュレーション・プロジェクト「フラッシュバックス」の一部で、2022年4月9日から2023年1月9日までBUILDINGBOXにて開催されます。創立5周年を機にBUILDINGが行ってきた芸術の研究および後援・振興活動の歩みのなかでも最も重要な部分を再現する試みです。

「フラッシュバックス」はBUILDINGの核となる部分を形成するにあたり寄与いただいたすべてのアーティスト、キュレーター、著述家に対する敬意を表し、ギャラリーの常設コレクションから厳選した作品を過去5年間の展示活動を記録したカタログやアーカイブ資料とともに初めて総合的に紹介する展覧会です。

 

「フラッシュバックス」で重要となるのは、作品が展示されている瞬間そのものがひとつのメディアであり、また作品・作家・ギャラリースペースのあいだに生まれる関係性とダイナミズムを映す鏡であるという考え方です。これらはより複雑なシステムを持つ批評的・美学的な部分にも影響を与え、BUILDINGのキュレーションの根底とプログラム立案を支えるものです。

また、各展覧会にあわせてBUILDINGが発行するカタログも重要な焦点となります。BUILDINGが単に現代美術を振興するためだけのスペースではなく、出版社として研究・調査を強く志向していることは、様々な出版物に寄稿されるテキストやその著者を慎重に選んでいることからも明らかでしょう。

本展ではBUILDINGのキュレーション活動のハイライトを振り返ると同時に、今後の展覧会プランのあり方をも展望します。これまでBUILDINGとともに歩んできたすべての人々に感謝しつつ、現在を問い直し未来を見据える新たな座標軸を描くためにも、批判的な目で過去を振り返る展覧会となるでしょう。

これまでの展示は不定期にBUILDINGBOXのスペースで、ミラノのモンテ・ディ・ピエタ通り23番地のウィンドウから24時間いつでも観覧できる状態で開催されてきました。当ギャラリーがプロモートする主要アーティストの代表作やこれまでの展示・出版活動を通して、コレクションの再解釈を行います。

キュレーター:アリス・モンタニーニ

 

出典:BUILDINGBOX


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