4年間における寄贈作品と購入作品

Squatting (Leaning on Eyes), 1997, glazed terracotta, 45 x 72 x 52 cm © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2020. / Photo: Philipp von Matt.

ヨーゼフ・ヘルフェンシュタインが館長に就任した2016年以降、1000点近くの美術作品がバーゼル美術館の公式コレクションに新たに追加されました。そのうち銅版画展示室に加わった作品だけで800点以上にのぼります。その一部をバーゼル美術館・新館にて展示いたします。館を挙げて取り組んできたコレクションの様子をご覧いただけます。

バーゼル美術館の公式コレクションは数世紀にわたって着実に成長してきました。ひとえに歴代の美術館責任者、寄贈者、芸術家の貢献によるものであり、その貢献は今日もなお続いています。しかし、一般の人々が新規に収蔵された作品を目にすることは例外的なことでしかありませんでした。

バーゼルには16世紀初頭から公共の利益を尊重する慈善的活動の伝統がありますが、文化・学問との相性が良かったことから、公式コレクションに恩恵を与え続ける決定的なものになりました。第一次世界大戦後には19世紀・20世紀の国際的な近代美術コレクションが集中的に拡大する時期が始まりました。第二次世界大戦後はラウル・ラ・ロッシュ、マーヤ・ザッハー=シュテーリン、マルグリット・アルプ=ハーゲンバッハ、リヒャルト・デッチ=ベンツィガー、マックス・ゲルトナー、マーサおよびロバート・フォン・ヒルシュなどの個人後援者の寄贈・遺贈によってコレクションがさらに充実してゆきました。これにくわえて重要なのが、美術館の増築を可能にした経済的支援です。1980年にはマーヤ・ザッハー=シュテーリンの支援により現代美術館が開館し、また彼女の孫娘であるマーヤ・エーリ名誉博士の先見の明と寛大な慈善心によって2016年の新館オープンが可能となりました。

バーゼル美術館のすべての歴代館長は、作品購入のチャンスが限られているなかでも常にコレクションを高いレベルへと発展させてきました。過去を振り返る視点でコレクションの手薄な箇所を埋め、また未来へ向けて現代的なポジションをコレクションに導入してきたのです。美術史的・社会的発展もコレクションの形成につねに一定の役割を果たしてきました。今日最も重要な課題のひとつには、美術館の国際的要求の高まりを考慮に入れる一方で、コレクションを多様化させるとともに規範的な伝統の拡大を図ることが挙げられます。ここには例えば重要な女性作家の作品がコレクションに加わることが増えてきたことが含まれます。

この4年間で、財団の支援のおかげで新たに重要な収蔵品を得られた分野の一つが戦後アメリカ美術です。例えば、リンダ・ベングリス、サリ・ディーンズ、ティースター・ゲイツ、サム・ギリアム、ゲリラ・ガールズ、マーサ・ロズラー、カーラ・ウォーカーなどの重要な作品群が収蔵されました。今挙げたのはすべて、これまでバーゼル美術館の規範的なコレクションには存在しなかった作家です。

バーゼル美術館の新規収蔵品の多くは寄贈によるものであり、美術館自らの資金ではけっして賄うことができなかったようなものも少なくありません。新規収蔵品のなかには取得後すぐにコレクション展示へとまわされた作品もあります。とりわけ、2019年春にクリストフ・メリアン財団のプロブスト・コレクションから寄贈されてセンセーションを呼んだ、パブロ・ピカソ、パウル・クレー、アルベルト・ジャコメッティ、フェルナン・レジェ、ジャン・デュビュフェの重要な作品7点がそれに当たります。これらは2020年7月から本館2階に展示されています。ルーカス・クラナッハ、カスパー・ヴォルフ、オーギュスト・ルノワール、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーの絵画も同様にコレクション展にて展示されています。

以上にくわえて芸術家たちの寛大な心がなければ、バーゼル美術館の所蔵品はこれほどまでに充実したものにはならなかったでしょう。その端緒を開いたのは19世紀のサミュエル・ビルマンであり、彼が財産から遺しておくように遺言してあった資金は今日もなおスイス美術の購入資金に充てられています。芸術家による寄贈で有名なのは、パブロ・ピカソ(1967年)やジャスパー・ジョンズ(1994年)のよるものなどが挙げられます。この伝統は幸いなことに近年も続いています。

銅版画展示室もこの4年間で豊富な寄贈を得ました。過去に大規模な寄付を行ったことのある人物が美術館に作品を寄贈しており、その中にはコレクションの手薄な部分を埋める重要な作品もあります。特に重要なのはエバーハルト・W・コルンフェルト名誉博士による2度目の寄贈であるレンブラントの版画作品です。これは卓越したクオリティーを誇る31点のエッチング作品であり、10月から本館の小展示室で展示されます。さらに銅版画展示室には、16世紀に描かれたハンス・ヴァイディッツJr.とアントニオ・テンペスタのドローイングという2つの重要な新収蔵品があります。

出展作家:Silvia Bächli, Sari Dienes, Cécile Hummel, イケムラレイコ, William Kentridge, Maria Lassnig, Renée Levi, Christian Marclay, Martha Rosler, Lynette Yadom-Boakye

キュレーター:ヨーゼフ・ヘルフェンシュタイン博士

出典:バーゼル美術館 

 

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