ジャン=シャルル・ブレ&イケムラレイコ

Installation view, Jean Charles Blais - Leiko Ikemura at Zidoun-Bossuyt Gallery, Luxembourg 2020 © Jean Charles Blais and Leiko Ikemura. Photo: Zidoun-Bossuyt Gallery.

イケムラレイコ

イケムラレイコの作品についてよく言われるのは、二つの文化の出会いによって特徴づけられているということです。西洋の美術史を参照しながらも、作品のテーマや形式的な語彙は、見る者を非対称性・不完全性・曖昧さを尊ぶ日本の伝統へとひたらせます。「想像力は私の作品における最も強い力です」とイケムラは言います。想像力を駆使して物事を完成させるこの取り組みこそが、作品を見る者を、限界・曖昧さの回避・対称性を志向する西洋の伝統との対話へと招き入れることができるのです。イケムラの作品では、理性的なコントロールから逃れ、自分自身と見る者を官能的で感情的な経験にひたらせようとしています。鑑賞者は、視覚的に無限の絵画空間を持つ横向きの風景画や、擬人化したかたちに解釈されうるコスミック・ランドスケープの中で、人間という生き物が動物のかたちをとったり、木や岩がひとの顔に変容したりするある種の中間的な世界に自分自身を見出すように思えます。絵画と彫刻、風景と人間描写など、それらのあいだは常に流動的にゆれ動いています。

「『Genesis』というタイトルの大型作品は最近の作品で、人間や自然界に存在するすべての生物の起源を考察したものです。ユートピアと戒めが同時に存在し、その一方で大きな女性像のモチーフは山や川、木などの自然のなかに存在するかたちへと変容していきます。もう少し小型の絵画では開かれた地平線を掘り下げ、抽象化の実践を示しています。これらは絵画が行為である瞬間を暗示しています。

私の絵画作品がほぼ非物質的で他にある現実を暗示しているのに対し、彫刻はもっと物理的な存在感を主張しています。それらは人間と動物のあいだにある銀色の猫のようなハイブリッドとも言えるでしょう。横たわる女性の姿は死を超えて力を発揮してゆく生命の循環を表しています。」(イケムラレイコ)

イケムラレイコは日本の津市に生まれた。大阪外国語大学でスペイン文学を学び、1972年にスペインに移住、サラマンカとグラナダでさらに学究を深めた。1973年から1978年までセビリアのアカデミーで絵画を学ぶ。スイスに移住後、80年代のチューリッヒのアートシーンに大きなインパクトを与えた。1983年にはボン芸術協会で大規模な展覧会が開催された。その後、国際的に有名な美術館等で数多くの展覧会や回顧展が開催され、なかでも最近注目を集めた展覧会には、クンストハレ・カールスルーエ(2012年)、ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡、2014年)、東アジア美術館(ケルン、2015年)、ハウ・アム・ヴァルトゼー(ベルリン、2016年)、バーゼル美術館(2019年)でのものが挙げられる。2021年にはイギリスのセインズベリー・アートセンター(「不思議の国のうさぎ」)、東京のシュウゴアーツギャラリーで作品を展示する予定。 

1991年から2015年までベルリン芸術大学(UdK、旧HdK)で教鞭をとる。2014年より女子美術大学教授。ベルリン(ドイツ)を拠点に活動している。

 

ジャン=シャルル・ブレ

大胆に抽象化されたフォルムが大きな看板ポスターの厚い層に描かれた人物へと徐々に変化していく―ジャン=シャルル・ブレは南フランスで探求を続けています。緻密に重ねられたポスターは、見る者の潜在意識を感情的・視覚的・身体的レベルで翻弄し、時代を超越した感覚を伝えます。

異なる時代の作品の比較はジャン=シャルル・ブレの作品に共通することです。彼の作品はクチュールをドローイングや絵画のように使用しており、多様なメディアの応用に満ちています。デジタルメディアの助けを借りて広告板やグラフィックが登場します。

本ギャラリーで展示される新作は、彼の具象的なレパートリーの中に収まっており、その魅力は様々に重ねられた紙にあります。80年代の初期の作品には存在していたものの忘れ去られていたかたちの記憶が再発見されたかのようです。身体の演出と曖昧さをもてあそぶような絶え間ない変化が多様な意味を生みだします。深層と表層が同時に存在することからかたちが現れ、作り出されます。それは現代的で、ユニークで、一貫していて、捉えどころがありません。

探し求めているのは中身のないかたち、しかしそれは身体がそこにないという記憶として現れ、またすぐに消えてしまうのです。

ジャン=シャルル・ブレは1956年ナント生まれ。1974年から1979年までフランスのレンヌ美術大学で学ぶ。パリと南仏ヴァンスを拠点に活動している。ジャン=シャルル・ブレの主要作品は、アンリ・マティス、カジミール・マレービッチ、フィリップ・ガストンなどの芸術家の作品に触れ、美術史的な言及にあふれる。これをベースに彼は独自に全くオリジナルな芸術的目録を開発し、人間の身体を描いている。最新作では特に深く感情を揺さぶるものとなっている。

ジャン=シャルル・ブレの絵画は、ポンピドゥー・センター・パリ(1987年)、ピナコテーク・デア・モデルネ(ミュンヘン)、ニース現代美術館、ボルドー現代美術館、アンティーブのピカソ美術館(2013年)などで展示された。ギャラリーでは、レオ・カステッリ(ニューヨーク、1984年)、トニー・シャフラジ・ギャラリー(ニューヨーク、1994年)、ギャルリー・イヴォン・ランベール(パリ、1992年~1998年)、ケンジタキ・ギャラリー(東京、2000年)が挙げられ、キャサリン・イッセール・ギャラリー(1983年~現在に至る)では定期的な展覧会が開かれている。パリ地下鉄・Assemblée Nationale駅のフリーズポスター(2013年)など、都市空間における様々なプロジェクトをデザインしている。彼の作品は、ニューヨーク近代美術館、ウィーン近代美術館、ニーム美術館、ボルドー現代美術館、アムステルダム市立美術館、モナコ国立美術館、ポンピドゥー・センター・パリなどの重要なコレクションに所蔵されている。

プレスリリース全文

出典:Zidoun & Bossuyt

 

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