第11回 ケルンの彫刻 ― 身体の操作

Leiko Ikemura, Katzenmaedechen mit Rhein-Blick, Stoffel Collection, Cologne, Skulpturen Park Köln, © Leiko Ikemura 1999. Photo: Martinevans123, 17 August 2012

出展作家:Olga Balema, Mary Bauermeister, Tom Burr, James Lee Byars, Nina Canell, Edith Dekyndt, Bogomir Ecker, Marte Eknæs, Ayşe Erkmen, Peter Fischli / David Weiss, 藤本壮介, Julian Göthe, Dan Graham, Lena Henke, Jenny Holzer, Judith Hopf, イケムラレイコ, Anish Kapoor, Stefan Kern, Hubert Kiecol, Klara Lidén, Dane Mitchell, Paulina Olowska, Jorge Pardo, Mandla Reuter, Ulrich Rückriem, Georgia Sagri, Michael Sailstorfer, Karin Sander, Frances Scholz, Thomas Schütte, Andreas Slominski, Mauro Staccioli, Mark di Suvero, Rosemarie Trockel, Simon Ungers, Bernar Venet, Bernard Voïta, Peter Wächtler, Paul Wallach, Lois Weinberger, Martin Willing, Trevor Yeung, Heimo Zobernig

ケルン彫刻公園をはじめとした庭園や公園は、自然をていねいに整理したかたちで切り取ったものと言えます。そこでは樹木、低木、石、芝生などの要素が持つかたち、リズム、色彩が全体的に調和しつつもコントラストを作りだしており、スタイルにもバリエーションが見られます。訪問者は園内の道に導かれ、時間と空間とが繰り広げる場の体験へと向かいます。そこでは細部までがバランスよく作りこまれ、雰囲気の変化や季節によって異なる光と影の交錯が陰影を添えます。

長年にわたって園内に常設され、場の全体を形成してきた彫刻や建築、それこそが第11回ケルンの彫刻(KölnSkulptur#11)のバックグラウンドにあるものです。モニュメンタルなものと刹那的なものとが起こす緊張のなか、現代美術が果たした重要な発展を吟味する機会となるでしょう。AI分野における技術の進歩、気候変動がもたらす影響、課題が山積する現在の民主主義制度、経済のありかたの革新といった、世界中が直面している重要なトピックを8人の現代アーティストがとりあげます。不確実で危機的なこのグローバル時代において、芸術、自然、未来をどう考えるのかが、今回のKölnSkulpturのために特別に制作された作品のなかにさまざまに反映され、かたちとなっています。

都市的環境は作品制作の出発点となっており、また社会的な交流の場として認識されています。そこは人、時間、そして場所の特徴が、野外に置かれた彫刻との出会いと基本的なかたちで結びつく場です。美術館のような閉鎖的で保護された空間よりも、環境の影響を各個人が直接体験し、より感じることのできるこの場所で、自然、文化、社会がもたらすさまざまな影響が私たちの身体にいかに作用するのかということが、展覧会を通じたテーマとなっています。

本展に招待されたアーティストたちは視線を外へと向けています。それはオブジェや提案を通して、境界を実験するための一種の生きた温床としてアートを活用するという体験へ私たちを誘うためであり、そこではあらゆる生体のもろさや傷つきやすさが可視化されます。彼らの作品は、私たちが知る人間世界が、科学技術によって根本的に変わりつつあるという認識に基づいています。このことは、人間であることの意味や、人的資本の文脈における身体の条件といったことに影響を与えています。彼らの作品は、文化的な物語における変容、特に歴史と個人の記憶のプロセスが身体と集合的記憶をどのように形成するのかということを反映しています。

身体を生物学的な見地からだけでなく、社会の中心的な「器官」として自然である部分と人工的である部分の両面を示すものとして見るべきでしょう。身体は同時に、社会におけるさまざまな物語や現実を抽象化したものとして、フィクション的な性質を帯びています。自己完結した身体という通常の基準を超え、ときにはめずらしい素材を取り入れることで、彫刻の多くが、空間と時間のなかに固定された永続的なかたちと存在を持つという、従来の彫刻の定義を広げていっています。その範囲は繊細なものから巨大なものまで、散らばったものから一枚岩のようなものまで、パフォーマンス要素のあるハイブリッドなものからフィルムという媒体まで、多岐にわたるものになっています。

ほとんどの作品が、マルテ・エクネスの「Insides」のように、その場所が規定する条件を考慮に入れて制作されています。この作品の場合は彫刻公園にあるくぼみという、与えられた枠組みに組み込まれたシステムへの洞察が見てとれます。リサイクルされた建築材料を使って、開かれた腹部とそこにある内臓を再現しているかのようです。同時に、隠されていることがほとんどである、切れ目なく続く都市のインフラを想像させます。ペーター・ヴェヒトラーによるブロンズ彫刻は、具象と実体のない抽象のあいだに位置するものであり、公共建築の前の(やや荒れた雰囲気の)広場といった、どこにでも見られるような彫刻作品に反応したものです。前時代の政治・社会・社会生活を反映する身体イメージに肩を並べつつも、差し迫った変化を前にして逃げ出すのか麻痺していくのか、どちらの方向に向かうのかは未解決のままです。

これらの作品に加え、本展ではオルガ・バレマ、ユリアン・ゲーテ、ユーディット・ホップ、パウリナ・オロフスカ、ジョージア・サグリ、フランセス・ショルツの新作を紹介します。彼らの試みは作品の素材となる物質に身体を見いだし、周囲の風景との関係における個人のポジションを交渉する手段として、身体を物質化することです。動きや方向の(コントロールされた)変化を必要とする巧みな操作を通して、人間の身体と世界との関係に対する新しい見方を切り開いています。

キュレーター:二コラ・ディートリヒ

場所:
Entrance Skulpturenpark Köln(ケルン彫刻公園入口)
Riehler Straße und Konrad-Adenauer-Ufer
50668 Köln / Cologne

開園日時:
年中無休
4月~9月:午前10時30分から午後7時
10月~3月:午前10時30分から午後5時

出典:第11回 ケルンの彫刻

 

Stiftung Skulpturenpark Köln(ケルン彫刻公園財団)
Elsa-Brändström-Straße 9
50668 Köln / Cologne
Germany

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