Leiko Ikemura. Before Thunder, After Dark(イケムラレイコ展・雷のまえ、暗闇のあと)

CRN Act, 2020, tempera on canvas, 120 x 100 cm © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2021. Courtesy of Building Gallery.

BUILDINGでは、日本人・スイス人のアーティスト、イケムラレイコのイタリアでの初の個展「Before Thunder, After Dark」を、フランク・ベームのキュレーションにより開催します。2021年9月4日から12月23日まで開催される本プロジェクトはイケムラの作品を幅広く紹介するもので、1980年代から今日までに制作された50点の作品が集められています。ギャラリーの4つのフロアを使って展開される本展では、全くの初公開となる歴史的にも意義のある作品や、BUILDINGのために制作された最新の作品が多数展示されます。そのなかにはヴェネツィアで最も歴史のある重要なガラス工房とのコラボレーションのもと制作されたガラス彫刻も含まれています。

イケムラレイコ作品の特徴は複雑で心を揺さぶるような視覚表現にあります。当初は具象的な作品が多かったのですが、近年は抽象的な作品が増えてきており、人間や、宇宙における人間のポジションというものにフォーカスしています。彼女の作品に繰り返し登場するモチーフに女性像がありますが、そのほとんどが空間的な制約から自由に描かれ、自然界の物理法則ではなく感情を伝えるような半抽象的風景の中に置かれています。彼女たちは時代を超えたイメージを体現する者たちであり、現代における人間の姿への視覚的認識に焦点を当てると同時に、実存するということの個人的表現でもあります。これらの作品を見ることは欠けるところのない完全体への憧れを心の奥へと与えてくれるような体験となるでしょう。

イケムラの表現世界は、ドローイング、水彩画、絵画、写真と多岐にわたっています。彫刻は主にテラコッタとブロンズですが、最近ではガラスも用いられています。個々の作品は非常に自律的で、小サイズであっても強い存在感を放っています。BUILDINGの各エリアではテーマごとに作品が設置され、本展で初公開される1980年代に描かれた大判の木炭ドローイングから始まり、繊細でニュアンスのある色合いが特徴的な1990年代の作品を経て、強く鮮やかな色彩の最新のキャンバス作品にいたる、イケムラレイコの視覚的表現方法の発展をたどります。

1階では本展のタイトルの由来となった2枚の大きな絵画《Before Thunder》と《After Dark》(ともに2014-2017年)が来訪者を迎えます。これらの絵画はイケムラの作品の根幹をなす何かができてくるという状況と絶え間ない変化を指し示しています。鉛色をした薄い大気の静寂のなかで、前景の人物のぼやけた輪郭が周囲の風景と融合し、満たされた精神性を放っているように見えます。これらの絵画と並ぶのが、1983年にニュルンベルクでの1年間の滞在中に制作された堂々たるパステル画《Ohne Titel》です。初期を代表する本作は30年来未公開であったもので、今回はBUILDINGでの限定展示となります。また、イケムラが様々なメディアを使って繰り返し深く追求してきた「横たわる少女」というテーマですが、《眠る人・赤》(1997-2012年)と《黄色いドレスを着て横たわる》(1997-2008年)の2作品はブロンズ彫刻で制作され、その静けさに満ちた孤独感のなかで女性像の抱える複雑さと傷つきやすい内面をすべて伝えるものとなっています。

2階には劇場を思わせる彩色された背景にブロンズやテラコッタの作品が配置され、合唱のような構成になっています。鑑賞者の視線が導かれる先はハイブリッドでグロテスクな生物の複雑な世界で、日本神話や、中世キリスト教の教会や大聖堂を飾る幻想的なかたちに触発されたこれらの生物は、奇妙でありながら親しみやすい特徴を持ちます。イケムラは1980年代終盤に彫刻というメディアを用いるようになり、1987年に初めて粘土を使った作品を制作しました。彼女が作り出す有機的な生き物のでこぼこした表面は、かたちをつくりあげていく際の身ぶりがそのまま表れたものであり、荒削りで不定形なものを記憶と夢や想像が混ざり合ったこれまでにない異質なかたちへと変容させたものです。

展覧会は3階に続き、この階には紙に描いたドローイングのシリーズが展示されています。メキシコへの旅からインスピレーションを得たもので、木炭の太くやわらかな線で視覚的言語がより直接的に表現されています。その線は神経質にも見える素早いストロークや暗くてけむったような斑点へとつながっていき、そこから幽霊のような幻影や神秘世界の霊妙なビジョンが浮かび上がります。

4階に展示されているキャンバスの絵画作品は直近の作であり、イケムラ作品の抽象的な側面への特別な視点を与えてくれるものです。《A Bit of Blue》(2019年)、《CRN Act》(2020年)、《New Horizon》(2019年)などの絵画では、作品の宇宙的な雰囲気がやわらかな光を放つように、物語性は色彩の強さと静かな詩情への余地を残しています。

最後になりましたが、本展のために特別に制作されたガラス彫刻も展示されます。この貴重な作品は、昨年BUILDINGBOXで開催されたキュレーションシリーズ「From Sand - Artworks in Glass」の際に、BUILDINGとヴェネチアの芸術的なガラスメーカーであるベレンゴ・スタジオとのコラボレーションによって生まれたものです。

開館時間:火曜日〜土曜日、午前10時〜午後7時

出典:BUILDING

 

BUILDING(ビルディング)
via Monte di Pietà, 23
Milano 20121

+39 02 89094995
https://www.building-gallery.com/en/
info@building-gallery.com