Leiko Ikemura. Colors in Motion(イケムラレイコ展・動きのなかの色)

ABC Akt, 2020, tempera on nettle, 70 x 50 cm © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn.

展覧会オープニングは6月18日(金)、午後5時~8時、Rämistrasse 33, 8001 Zürichにて開催

ギャラリー・ペーター・キルヒマンはレミス通りの当ギャラリーにてイケムラレイコ個展を初めて開催いたします。イケムラレイコは日本の三重県津市に生まれ、1973年にヨーロッパに移住しました。日本とスイス両方の国籍を持ち、1990年よりベルリンとケルンに在住・活動しています。本展で展示する作品は4つのグループに分けられますが、広範囲にわたる作品がコンセプトとテクニック両面の多様性のなかで反映し、さらに発展してゆくものとなっています。5つの展示室すべてで連作やシリーズが中心となって展示され、それぞれ独自の緊密さを保っていますが、異なるシリーズどうしで参照しあい、ポエティックな類似性を形成しています。今回の展示では紙に描いた中小サイズのペインティング、ガラスを用いた彫刻の新作、ビデオプロジェクションによるインスタレーションなどを紹介します。

イケムラレイコの作品は、芸術活動を始めた当初から個人的な旅や人生のさまざまな局面と密接に結びついてきました。母国である日本で刻まれた記憶は、1970年代から80年代にかけて滞在していたスペインやスイスで得た印象などと同様に、今日まで彼女とともに生きています。生涯にわたり絵を描きつづけ、それが私的な領域のなかで変容していくことは、人間と自然が融合した風景や不定形のフォルム、絶え間なく変化するハイブリッドな神話的生物のなかに描き出されています。

ギャラリーに入るとすぐに鑑賞者は「少女」の世界に浸ることになるでしょう。少女は1990年代半ばからイケムラレイコの絵画を特徴づけるものとなっています。本展で展示される4点の絵画は、いずれも異質な風景の中に少女のような人物の姿が描かれています。作品「チカとピンク」(2019年、120×100cm)の背景の色調は紫のモノトーンで、それを崩すのが構図の下3分の1のあたりにうっすらとした青の筆致で描かれた、丸みを帯びた地平線です。その前に立つ軽やかではかなげな人物は透きとおるような色合いでシルエットが描かれ、温かみのあるゴールデンイエローとやわらかなブルーの色調で周囲から浮かび上がっています。このコントラストと透明感のある描法は「緑の髪の少女」(2019年、90×60cm)や「青い顔の少女」(2019年、130×190cm)などの作品でもそれぞれ新たな色の組み合わせで繰り返されています。あたかも目に見えない色相の帯がそれぞれのシーンをつなぎ合わせているかのようです。ここに描かれた少女は傷つきやすく手の届かない存在に見えます。まるで世界と世界のあわいに捕らえられたかのように、彼女たちは自らのメランコリックな想いに遊んでいます。

地下のビデオ・インスタレーション「In Praise of light」(2020年)では、イケムラレイコの作品全体が調和しあいながら総合されているのを見ることができます。光と流れるような色がたわむれあう作品です。そのゆっくりとした動きは、いつでも新たなかたちへとつながっていく、まだ乾いていないとろりとした水彩絵具を思わせます。それは完成した絵画ではなくプロセスとしての絵画という考え方です。鑑賞者はしばし足をとめて瞑想のひとときを過ごし、おだやかな視覚の波によって見知らぬ宇宙へと引きこまれることになるでしょう。このインスタレーションが初めて発表されたのは2020年、ベルリンのマテウス教会で、もともとは教会後陣(アプス)に設置するべく構想されたものです。今回のギャラリーでの展示では展示空間と調和がとれるよう、作家自身の手で作品を配置しなおしました。

「In Praise of Light」は上階中央の部屋に展示されているシリーズ「ABC Akt」(2020年、70×50cm)と直接的に関連しています。従来のイケムラレイコ作品でこれほどまでに具象から離れたものはありません。その抽象的な構図は、少女画シリーズの持つ水彩画のフラットな美しさと筆で描いた書画の要素を組み合わせたものです。ところどころ絵具がごく薄くしかのせられていない部分があり、そこでは支持体である布地の細かい構造が見えるようになっています。室内に入る自然光を取り込み、その光を再び放つかのような絵画技法です。これらの作品の制作背景にあるのは2020年春にベルリンで行われた最初のロックダウンであり、不安定で、生活の根幹が崩れていくような時代のムードを捉えたものです。社会が停止した瞬間、世界は未だ知らぬ世界へと進んでいきます。

左側の展示室では、抽象的な表現は見る者を夢へと誘うようなシュールレアリスム的風景の世界へとその場を譲ります。「Yellow Scape」(2019年、110×180cm)などの作品に見られる、透明に塗り重ねられた絵具や重厚な輝きが他の展示作品への橋渡しの役割をしています。「ツァラトゥストラ(小)」(2014年、50×70 cm)のうずくまった少女の姿のようなすでにおなじみのモチーフが、木や谷や山のなかに入り込んでいます。自然と人間とが調和することへの願いを伝えるこの風景を、作家自身は「魂の風景」と言い表しています。三枚組の記念碑的作品「Fuji Scape」(2015年、各100×150cm)は日本の古い画匠の風景画を思い起こさせます。火山の上に人間の顔がのせられていたりと、夢のようなひとつづきの作品は、山や岩、植物に生き生きとした精神を見るような有機的自然観からなる要素とのたわむれのなかで成立しています。

最後の展示室のガラス彫刻にも同様のハイブリッド生物が見られます。「きつね」(2020年、20×32×13cm)や「Trees on Head in yellow Glass」(2020年、14×18×11cm)などです。横になった頭部から繊細な木の枝や葉が生えている姿はイケムラレイコの陶磁器の初期作品にすでに登場する題材ですが、ガラスを扱ったものは今回の展覧会が初めてです。色のついたガラスは光を通すため、ガラス彫刻はそれまで見ていた風景画のなかの生物が現れたもののように見え、ハーモニーのなかで物語の輪が閉じられます。

イケムラレイコの作品は1980年代初頭から世界各地の個展やグループ展で発表されています。直近ではカハ・デ・ブルゴス芸術センターでの個展「Leiko Ikemura: Aun más mañanas(イケムラレイコ展・明日をもっと)」(2021年春)が挙げられます。その他、以下の美術館他でも個展が開催されました(抜粋)。:クンストハレ・ロストック(2020年)、マテウス教会(ベルリン、2020年)、バーゼル美術館(2019年)、ノルディック水彩画美術館(スケルハムン、2019年)、国立新美術館(2019年)、ハッチェンス・ドイツ陶磁器美術館(デュッセルドルフ、2017年)、ネヴァダ美術館(リノ、2016年)、ケルン東アジア美術館(2015年)、ヴァンジ彫刻庭園美術館(三島、2014年)、カールスルーエ国立美術館(2013年)、ベルリン・アジア美術館(2012年)、東京国立近代美術館(2011年)。最近では、エスター・シッパー(ベルリン、6月27日まで)、碧南市藤井達吉現代美術館(2021年)、豊田市美術館(愛知、2020年)、プリンセスホフ国立陶磁器美術館(レーワルデン、2020年)、東京国立近代美術館(2019年)、ミュージアム・オブ・ザ・シーム(エルサレム、2019年)などでグループ展に参加しています。

イケムラレイコの作品は重要な美術館のコレクションに収蔵されており、アールガウアー・クンストハウス(アーラウ)、アルベルティーナ(ウィーン)、ドイツ連邦共和国芸術コレクション(ベルリン)、スイス連邦文化庁(ベルン)、ドイツ連邦共和国美術展示館(ボン)、クール・ビュントナー美術館、クンストハウス・チューリッヒ、バーゼル美術館、原美術館(東京)、MCBA(ローザンヌ州立美術博物館)、東京国立近代美術館、mumok(ルートヴィヒ現代美術館、ウィーン)、アラーハイリゲン美術館(シャフハウゼン)、ベルリン国立美術館内国立版画素描館、高松市美術館、ポンピドゥーセンター(パリ)、国立国際美術館(大阪)他があります。

その他詳しい情報についてはFabio Pinkまでお問合せください。fabio@peterkilchmann.com

出典:Galerie Peter Kilchmann

プレスリリース(英語)

 

Galerie Peter Kilchmann(ギャラリー・ペーター・キルヒマン)
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