パトリシア・ロー・コンテンポラリーでは、日本出身のスイス人アーティスト、イケムラレイコの個展「Kiss the Earth(大地にキス)」を開催いたします。1980年代にノイエ・ヴィルデに属するひとりとして注目を集めたイケムラですが、激しい表現力で作品をつくりだす彼女のアプローチは、ペインティングそのもののディアスポラ的な作風だけでなく、変容の可能性を秘めていることを誇示するかのようです。ハイブリッドであること、交錯する異文化、セクシュアリティ、流動する心理といったテーマがイケムラの作品全体を貫いており、本展ではそのテーマを絵画と彫刻の双方で見ることができます。
制作はイケムラの活動のまさに中心にあるものです。彼女は自身の作品を抽象化でも具象化でもなく、むしろ「芸術的モチーフ」であると言い、何かになってゆくプロセスを通じて主体性を獲得するのだと言います。他に例のないほど自由にメディア間を行き来するイケムラですが、陶製作品とペインティングは、イメージ以上に行動や感情を伝えてくれる、非常に身体的で自然発生的なものとして扱っています。生の素材感と「未完成」の感覚が純粋なエネルギーを伝え、視覚と触覚、アーティストと鑑賞者のあいだにクリエイティブな「伝達」の瞬間を生み出します。
本展のイケムラのキャンバスには、ヨーロッパのロマン主義から、そして日本の伝統的な絵画や書道から分け隔てなく引用が行われています。エキゾチックな風景がテンペラのようなウォッシュから立ち現われ、心理的な広がりが不可能な空間に浮かび、色合いを強めた部分と熟考された筆致によって有機的に定義され、人物や顔の細部はピントが合っていたりいなかったりします。ペインティングとともに展示される彫刻はテラコッタや鋳造ブロンズで作られており、一部が欠けている人物像が会場を埋めつくしています。その変形した外形は、大地を思わせ、柔和で女性的で、想像や憧れのつかの間の瞬間を、時間・時代を超えてゆく彫刻として形にとどめたものです。
イケムラレイコの作品は著名なパブリック・コレクションに多数収蔵されています。例として、ルートヴィヒ現代美術館 MUMOK(ウィーン)、ポンピドゥー・センター(パリ)、ボン芸術協会、ベルリン・ギャラリー、ケルン彫刻公園、原美術館(東京)、東京国立近代美術館 MOMAT、バーゼル美術館、ベルン美術館、リヒテンシュタイン美術館、ヨーロッパ陶芸センター(オランダ)、ザンクトガレン美術館、国立国際美術館(大阪)、セントルイス大学美術館 SLUMA(アメリカ)が挙げられます。また、最近行われた美術館での個展は以下の通りです。「Poetics of Form(かたちの詩学)」ネバダ美術館(アメリカ)、「All About Girls and Tigers(少女と虎のすべて)」東アジア美術館(ケルン)、「Last und Lust(負担と欲望)」ニュルンベルク美術館(ニュルンベルク)、「PIOON」ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)、「i-migration」カールスルーエ国立美術館(カールスルーエ)、「Korekara oder Die Heiterkeit des fragilen Seins(これから、またははかない存在の平穏)」アジア美術館・ベルリン国立美術館・ダーレム美術館(ベルリン)、「うつりゆくもの」東京国立近代美術館、三重県立美術館(日本)。2014年ケルン賞美術賞、2013年JaDe財団JaDe賞受賞。
パトリシア・エリス
出典:https://patricialow.com/exhibition/leiko-ikemura/
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