イケムラレイコ モーション・オブ・ラブ

Exhibition view at Museum de Fundatie, Zwolle, Netherlands 2023 © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2023.
brave girl in orange, 2022, tempera and oil on nettle, 150 x 110cm. © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2023.

「モーション・オブ・ラブ」はオランダでは初めてとなる美術館でのイケムラレイコの個展であり、彼女が熱意を傾けてきた素材、詩、空間といったことがらをよく反映したものとなっています。タイトルの「モーション・オブ・ラブ」は、私たちはみな本質的な部分でつながっているのだというイケムラの思いに合わせたものです。その思いの上に築き上げたイケムラ独自の宇宙にはハイブリッドな少女と動物が住み、生と死、女性性、自然をテーマにした作品が生み出されてきました。本展ではブロンズ、テラコッタ、ガラス、絵画、ドローイング、映像、写真といったさまざまなメディアにわたる1980年代から現在までの作品を集めて展示します。この素材の多様性は、芸術はつねに変化していく過程にあるものだという信念と多くの旅から着想を得てきたイケムラレイコの、ジャンルを問わない制作方法をよく示しています。

本展で展示される初期の作品には、ペインティング、ドローイング、未公開のケミグラムが含まれ、イケムラの表現主義的なルーツが見てとれます。そのスタイルは直接的で力強く、クリアなものです。「ケミグラムのために暗闇のなかで絵を描かなければなりませんでした。それはまさに「無知」ということです。(中略)そのとき私は想像力が大きく広がる自由を感じました」(イケムラレイコ、カタログ「Motion of Love」より)

あわせてイケムラの陶製塑造の初期のものと少し後の時代のものも展示されます。手でかたちづくられ色釉が施された、荒々しい部分のある粘土の像は、ダイレクトで生々しい生命力に満ちたイケムラ作品の初期の特徴を体現しており、日本の埴輪や西洋の中世彫刻を思い起こさせます。かたちのなかに残る目に見える物理的な痕跡というものはイケムラレイコの作品の重要な出発点であり、彫刻作品でも絵画作品でも見ることができます。

ペインティングの作品シリーズ「少女」には明確なスタイルの変化が見られます。このシリーズは1990年代に始まったもので、現在も制作が続けられています。これらのペインティングはある批判を秘めています。それは造形美術において女性というものが受動的で声なき存在として表現されてきたことに対するものです。イケムラは自らの「少女」のために、新しい色調、新しい技法、新しい素材を使うようになりました。観る者に対峙するような等身大のペインティングは、高揚感と共感の両方を呼び起こします。

大型のペインティングにイケムラが描くスケープは、四季、絶えることのない変容と反復といった着想を反映しています。「ある場所を描きだそうとは思っていません。むしろ風景の一部であろうとしています。私たち自身が風景なんです。なぜなら、だれかの顔をよく見れば、そこに山や湖が見えるからです。風景はどこにでも見つかりますし、それが私にインスピレーションを与えてくれます。そして、私自身の記憶も私をインスパイアします。だから、描きはじめたり、自分自身や記憶からやって来るある動きをすると、それが風景に行き着くことがあるのです。私は風景のリズムが好きで、波のように感じられます。大地は波のようにうねり、つねに変化しています。流動的なのです。何千年もかかりますが、そういうものなのです。変化するのです。それが私を惹きつけるのです。私はそこにある山や湖を描いているのではありません。私がすること、それは私の行為で、なぜなら私たちは波のようなリズムを自分のなかに持っているからです。私たちはみな、猫であり、風景であり、少女なのです。」(イケムラレイコ、カタログ「Motion of Love」より)

デ・フンダーティ美術館の「モーション・オブ・ラブ」展にくわえ、ヘイノ/ヴァイエのナイエンハイス城彫刻庭園では、イケムラレイコのブロンズ彫刻をいくつかご覧いただけます。そのうちのひとつが「うさぎグリーティング(2023)」で、そのモチーフはイケムラ作品のなかでも最もよく知られたもののひとつです。ウサギの耳と人間の顔を持つこのハイブリッドな存在はすべての死者への慰霊のシンボルです。この彫刻が初めて制作されたのは2011年で、福島での原子力発電所の事故と、その後報道された動物の先天性異常を受けたものです。この彫刻を通してイケムラは創造と破壊のサイクルに疑問を投げかけ、生物が生息可能な自然がますます脅かされている現在、地球の未来への懸念を表明しています。

イケムラレイコは日本に生まれ、現在はドイツのベルリンとケルンに在住し、キャリアは50年以上にわたります。1972年に日本を離れ、スペイン・セビリアの芸術大学で美術を学びました。1979年にスイスに移り、1980年代にドイツに居を定めました。作品への向き合いかたや世界観にこれまで暮らしてきた地のさまざまな文化の影響が見てとれます。

「モーション・オブ・ラブ」展にあわせ、論考やイケムラレイコのインタビューが豊富に掲載されたカタログがヴァアンダース社とデ・フンダーティ美術館より刊行されます。


波、風、私たち(WAVE, WIND, WE)― イケムラレイコ インタビューとパフォーマンス
9月22日(金)19時~20時30分
場所:デ・フンダーティ美術館
英語での開催

美術家イケムラレイコが自身の個展「モーション・オブ・ラブ」の限定特別プログラムのためにオランダへとやってきます。本プログラムはイケムラへのインタビューと、イケムラがコレオグラフィーを担当した新作パフォーマンスで構成されます。

出典:デ・フンダーティ美術館プレスリリース(英語)プレスリリース(ドイツ語 1)プレスリリース(ドイツ語 2)

 

 

Museum de Fundatie(デ・フンダーティ美術館)
Blijmarkt 20
8011 NE Zwolle
Netherlands

tel. +31 (0) 572 388188

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https://www.museumdefundatie.nl/