イケムラレイコ 新しい女の子 オア ディフィカルト・ガールズ

Difficult Girl, 2022, tempera and oil on nettle, 100 x 80 cm. © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2022.

ギャラリー・ペーター・キルヒマンはパリでの新しいギャラリーをマレ地区・アルクビュジエ通り11-13番地にオープンする運びとなりましたことを喜んでお知らせいたします。オープンを飾るのは日本・スイス人アーティストのイケムラレイコ(三重県津市生まれ、ベルリンおよびケルンに在住・活動)の展覧会「新しい女の子 オア ディフィカルト・ガールズ」です。新作のペインティングの他、ガラスとブロンズの彫刻からセレクトした作品と親密な雰囲気を持つギャラリースペースとが生み出す相互作用をお楽しみください。

「新しい女の子 オア ディフィカルト・ガールズ」と題した本展では、イケムラ作品のなかでもっとも有名と思われる少女シリーズとのつながりがご覧いただけます。少女は1990年代中盤に彼女の作品に現れてきたもので、それ以降キーになるモチーフとなりました。流れるように塗られた色からなる繊細なシルエットは、観る者に光やコントラスト、透明感が組み合わさったような存在との出会いをもたらします。背景に引かれた地平線を表しているように見える線はそこに風景が存在することを思わせます。いつもなら無垢、傷つきやすさ、メランコリーがひとつになったものとして輝きを放つ少女たちは、新作ではその不気味な一面をあらわし私たちを惹きつけます。

同じタイトルの二枚のペインティング「ディフィカルト・ベイビー」(ともに100 x 80 cm)では、ボルドー色・赤紫色の背景が鈍い輝きを持ち、少女の姿の輪郭を際立たせています。ぼんやりとしか描かれていないにもかかわらず、その視線はじっと見る者へと向けられており、準備万端戦いを挑むかのようです。「ディフィカルト・ガール」(100 x 80 cm、招待状に使用)では少女らしい顔立ちは荒々しい表情へと変わり、身を守るようなポーズが強調されています。「ガール・イン・イエロー」(100 x 80 cm)に登場する人物のダイナミックな動きは子供のような強さを感じさせ、紛争がくり返される世界情勢に反抗し立ち向かうかのようです。釉薬の色合いはまるで大気の光を吸いこんだかのような繊細であたたかな黄色の輝きを見せています。同様の描き方が繰り返される題材はないものの、「ガール・イン・イエロー」(100×80cm)等の作品では、調和とバランスのとれたかたちで具象が抽象へと変容しており、鑑賞者は川の流れを追うようにその展開を見ることができます。

優美な女性の胸像である彫刻作品「思案」(ブロンズ、パティナ、40 x 43 x 21 cm)にも「流れ続けてゆく川」という比喩をあてはめることができるでしょう。少し首をかしげ、はっきりと作りこまれていない顔立ちから瞑想的な印象を受ける作品です。緑青ブロンズのやわらかく真珠のような輝きがある種のもろさを感じさせ、この人物が俗世から離れた近づきがたい存在であるように見せています。何かを暗示するような手は口元に添えられ、そこへ溶けていくように見えます。これはイケムラの作品に繰り返し登場するモチーフの穏やかなバージョンであり、そのモチーフというのは流れるような循環と変化を表し、自身が自律的に閉じている一方で、外界や自然とのつながりを見せるものです。

ここ2年でイケムラレイコが用いる技法のレパートリーにガラスが加わり、透明感が彫刻のなかでたわむれるような作品づくりを可能にしました。すりガラスが空間の光をつかまえて閉じ込め、彫刻内部から光を放つように見える不思議な印象を残します。ずっと在りつづけるものと変容するものをかたちにするというイケムラ作品にあるプロセスがガラスという媒体に呼応し、ガラスの密度を思わせない軽やかさと光が一体化したものとなっています。

イケムラレイコの作品は1980年代の初めより個展・グループ展問わず世界中で展示されてきました。2021年にはポンピドゥーセンター(パリ)でイケムラ作品の大規模なコレクション展が開催されました。現在開催中の展覧会にベルリン国立博物館アジア美術館でのインターベンション「イケムラレイコ もっと光を!」(2023年2月27日まで)があります。2023年にはゲオルク・コルベ美術館(ベルリン)での個展とサポパン美術館(メキシコ、グアダラハラ)での個展を予定しています。近年ではCACアートと科学の美術館(バレンシア、2021年)、セインズベリー・センター(ノリッジ、2021年)、カハ・デ・ブルゴス芸術センター、クンストハレ・ロストック(ともに2020年)、バーゼル美術館(2019年)、ノルディック水彩画美術館(シェールハムン、2019年)、国立新美術館(東京、2019年)で個展が開催されました。パリで開催されたものとしては「Ceramix – ゴーギャンからシュッテのセラミックアート」セーヴル市陶器美術館 ラ・メゾン・ルージュが挙げられます。イケムラレイコの作品は重要な美術館に収蔵されており、アルベルティーナ美術館(ウィーン)、ポンピドゥーセンター(パリ)、チューリヒ美術館、MCBA・ローザンヌ州立美術館、アールガウ美術館(アーラウ)、MOMAT・東京国立近代美術館、ルートヴィヒ美術館(ケルン)、アラーハイリゲン美術館(シャフハウゼン)、ネヴァダ美術館(ネヴァダ州リノ)他多数が挙げられます。

オープニング:2022年10月15日、午後5時~8時

開廊時間:
水曜日~金曜日:午前11時から午後7時
土曜日:午前11時から午後5時
その他予約に応じて

出典:ギャラリー・ペーター・キルヒマンプレスリリース(ドイツ語)

 

Galerie Peter Kilchmann(ギャラリー・ペーター・キルヒマン)
11-13, rue des Arquebusiers
FR-75003, Paris
Phone: +33 1 86 76 05 50
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