流浪の山々

Trees out of head, glazed terracotta, 30 x 37 x 24 cm © Leiko Ikemura 2015 Photo: J. v. Bruchhausen, Berlin

Galerie Karsten Greve Paris(パリ、フランス)にて、イケムラレイコのに個展 "Mountains in Exile" が開催される。同時期に開催が予定されている La Maison Rouge および Cité de la Céramique de Sèvres での「Ceramix - ゴーギャンからシュッテのセラミックアート」展と並行して展示される40点以上もの作品からは、実に多岐にわたるメディアを駆使するイケムラレイコのアートの幅の広さが実感できることだろう。ブロンズやテラコッタを彫塑し、パステルで紙に、あるいはオイルでバーラップに描くなど、あらゆる技法を用いる。

キャンバスに描かれた絵画作品は、日本の田舎の風景のパノラマを想起させ、観る人を沈思へと誘い、テラコッタ製の彫刻は独特のイマジネーション、私的な世界、宗教的な世界との関わりを思わせる。限りなく詩的に、現実世界と捉えどころのない想像世界の狭間をさまようかのように、イケムラの作品は意味深長でありイコノグラフィックな示唆と深く結びついている。

「山」は、このアーティストのペインティングやドローイングに頻繁に登場するモチーフ。 濃い霧のなかにうっすらと、あるいは鮮やかな背景として描かれていたりするにしても、イケムラの作品の構図のなかで山は中心的な位置を占めているといっていいだろう。根源をたどってみれば、山とは、生命が「死」に打ち克つシンボルといえるのではないだろうか。もっとも、「死」というテーマも「メメントモリ」(Memento Mori, 2013)と題した一連の彫刻作品に投影されている。

具象的絵画のフェーズを経て、1984年頃からイケムラは彫刻と取り組むようになり、その後1990年代半ばからの絵画作品に新たな展開をもたらした。この新しい、2013〜2015年の間に制作されたペインティングやペーパー作品では、主に自然を中心テーマとしており、彫刻や擬人化したセラミック作品は際限なく進化を遂げる人間像をかたどっているかのようだ。それもけっしてひとつの世界にとどまるのではなく、いくつものユニバースを自由に行き来できる境界線のなさを味わえる。ヒトが自然界に違和感なく溶け込んでいる作品 "Naked", "Tree and Blue Face"や、"Mishima"(いずれも2014年作)からもうかがえるように。

バーラップ地のキャンバスにテンペラで描いた樹のシリーズはどこかオディロン・ルドンの作品を彷彿とさせるが、それはやはり従来の手法にとらわれない独特な色遣いからきているともいえるだろう。赤、グレーやオークルが全体の構成に動的なアクセントを与え、瞑想的な日本の風景と対照を織りなす。また、生命の偉大な代表者とも呼べる「樹」という存在が、ここでは不安と不確定的なムードを醸し出していることにも注目したい。(プレスリリースより翻訳)

開場時間:
火曜日~土曜日 午前10時~午後7時

出典:
www.galerie-karsten-greve.com/en/exhibition/leiko-ikemura/en-4
展覧会カタログ
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