むかしむかし・・・今日

Exhibition view at Villa Mautner-Jäger, Wien 2023 © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2023. Photo: Tom Wagner.

グループ展「むかしむかし・・・今日」 は、重厚な室内が印象的なヴィラ・マウトナー・イェーガーで開催されます。この建物の建築が反映しているのはウィーンのベル・エポックが残した文化遺産であり、マウトナー・イェーガー邸はそのよき一例と言えるでしょう。本邸を設計した建築家フランツ・フォン・ノイマンは、建築を現代的なかたちに組み込むには旧来のかたちからとぎれずに発展させる必要があると考えました。本グループ展のキュレーションの基本方針はこのフォン・ノイマンの考え方にのっとっています。

展示に用いられる室内建築の並外れて素晴らしい造りと病的なまでの魅力を放つインテリアに触発され、本展はサロン文化の華やかな19世紀を甦らせたかのようです。出展作品は主に絵画から選ばれており、絵画の持つ様々な側面に焦点をあてています。参加している作家は共通して国際的な評価を得ており、そしてそのほとんどが1950年代生まれで、同世代どうしの経験を共有しています。1980年代に芽生えた「絵画への渇望」、そしてその全く新しい題材や描きかたに出会ったことで自らの地歩を固めた作家も少なくありません。

テオ・アルテンベルクの絵画は抽象的で色彩豊かで、ヘルベルト・ブランドルが描く深い森の闇や霧の立ち込める神秘的な湾といった雰囲気のある絵画とは対照的です。フランチェスコ・クレメンテの遊牧民的で断片的な作品は多くの旅から生まれたものであり、異なる文化が背景にある経験、神話、物語への理解を深めることのできる作品となっています。彼の代表的な作品は大判の絵画と落ち着いた雰囲気の水彩画です。マルタ・ユングヴィルトの抽象/具象へのはっきりとしたアプローチは力強く衝動的であり、キャンバスや紙の上に描かれた大判の水彩画にその様子を見せています。ハラランピ・オロシャコフのアイデンティティーの探求はスピリチュアルな意味あいを含み、落ち着いたトーンでキャンバス上にさまざまな切り口を見せてくれます。ケルスティン・グリムの作品を特徴づける幻想的なディテールに満ちたドローイングは、シュールレアリスム的なシーンを描き出しています。これはゲオルク・ドコピルによる光り輝く「シャボン玉ペインティング」とははっきりと異なり、その色彩スペクトルはアルネ・クインツェの花柄の大型作品に通じるものがあります。アルヌルフ・ライナーの作品は1960年代の紙作品と2001年のミクストメディアの大判作品に代表されます。3つの異なる作品群のエキサイティングなセレクションから展示されるユリアン・シュナーベルの作品は紙に描かれたペインティングで、2012年の「マップ・ドローイングス」の1枚も含まれています。

「むかしむかし・・・今日」展では、デイヴィッド・ラシャペルによるエキゾチックな花の絵を取り上げ、現代写真の絵画的な側面も紹介します。さらにいくつかの彫刻作品が本展を豊かなものにしています。トニー・クラッグはドイツ統一へのオマージュ作品、エルヴィン・ヴルムは人間のプロポーションや体積を変化させた、ユーモラスで遊びに満ちた「Gate」を出展しています。メディアアーティストのハンス・クッペルヴィーザーによる磨き上げられたステンレスのダイナミックな抽象作品とイケムラレイコの紙作品やブロンズ作品「うさぎグリーティング」の具象作品とは観念的なコントラストをなしています。イケムラの彫刻は人間と動物のハイブリッドであり、文化の融合、そしてその屋根の下で宇宙的なものとつながりあうものがあらわれる「家」を形成しています。

出展作家:Theo Altenberg, Herbert Brandl, Francesco Clemente, Tony Cragg, Georg Dokoupil, Kerstin Grimm, イケムラレイコ, Martha Jungwirth, Hans Kupelwieser, Julian Schnabel, Arnulf Rainer, Erwin Wurm, David LaChapelle, Haralampi Oroschakoff, Arne Quinze

キュレーター:Reiner Opoku

テキスト:Charlotte Desaga

出典:プレスリリース

 

 

Villa Mautner-Jäger(ヴィラ・マウトナー・イェーガー)
Landstraßer Hauptstraße 140-142
1030 Wien
Austria