ヨークシャー彫刻公園・野外展示

Usagi Kannon II, 2013/19, patinated bronze, 330 x 118 x 155 cm, Yorkshire Sculpture Park 2020 © Leiko Ikemura. / Photo: Jonty Wilde, Yorkshire Sculpture Park.

「男性アーティストがイメージする女性の姿は理想化されたかたちであることが多く、いつもある意味で誘惑的な存在にされています...慣習や社会規範に規定されるのを女性が自然に受け入れるなんて、そんなことには興味がありません」   

1951年、日本の津で生まれたイケムラレイコは、日本とヨーロッパの芸術の特徴を融合させた、ドローイング、絵画、彫刻に渡る作品を制作している。イケムラはスペインの美術アカデミーで絵画を学び、その後スイスで芸術家として活躍。1983年に当時新表現主義が主流となっていたドイツに移り住んだ。新表現主義とは、鮮やかな色彩、本能的なマークメーキング、歪んだかたちを用いてアーティストが生の感情を表現する美術運動である。

イケムラが始めたのは、表現主義的な絵画のなかで女性であることや見知らぬ土地で異邦人として存在することの難しさを扱い、自身のアイデンティティや日本人としてのルーツを探求するという実験だった。

1990年代半ば以降は女性像が多く描かれ、そのなかで幼年期の純真さや母子のつながり、生死といったことがらが探求されてきた。彼女が実際に描いてきた主な作品テーマには人間と動物が溶け合うハイブリッドや神話的なキャラクターがあり、しばしば観る者に奇妙さと親しみの両方の感情を呼び起こす。

うさぎ観音IIは青銅製の像で、ウサギの耳と涙を流す人間の顔を持つ。イケムラ作品の最も重要なモチーフのひとつだ。このキャラクターが初めてつくられたのは2011年、日本の福島原発事故と、それに関連して報道された先天異常を持って生まれた動物へのリアクションとしてだった。      

作者自身の説明によれば、このハイブリッドな生き物は普遍的な死への哀悼の象徴であり、つり鐘型のスカートは守り神として機能しているという。創造と破壊のサイクルに疑問を投げかけながら、自然生物のすみかがますます脅威にさらされているこの時代に、イケムラは地球の未来に対する自身の懸念を作品を通じてわれわれと共有しようとしているのだ。

出典:ヨークシャー彫刻公園

入場無料

 

Yorkshire Sculpture Park(ヨークシャー彫刻公園)
West Bretton
Wakefield WF4 4LG
United Kingdom

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