シェアすることはケアすること (5) 記録を超えて

Yuriage 2011 photo © Leiko Ikemura

「シェアすることはケアすること」はハイデルベルク芸術協会で2012年から続くシリーズで、福島原発事故をテーマとした5年連続の展示です。毎年10週間にわたり、福島原発事故後の状況からつながる現実と文化的出会いについてアップデートし、探求し、反映させる展覧会を開催しています。

これまでの展覧会では北日本の住民と交流するアート作品やプロジェクトが紹介され、日本国外にはなかなか届きにくい声が集められました。作品は混乱、対立、熟考、変化、挑戦といった日常生活のなかのデリケートな細かい部分にまで注意を払い、感情、経済、政治のあいだに現れる複雑な関係性を捉えています。

第5回の「シェアすることはケアすること」展は、「記録を超えて」と題し、観測・測定される現実を超えてゆく詩情の力に焦点をあてています。今回の事故がもたらした影響や今後起こりうる自然災害を予測するために、最先端技術を用いた膨大な量の測定が行われました。科学的観点からこのような計測が現実を描くのに対して、詩は別の時空を生み出します。われわれに物事を異なったスピードとスケールで見せてくれます。計測やその結果の記録と同様に、あるいはそれ以上に、詩の力は強いのです。そしてここで忘れてはならないのは、想像力が持つ力、つまり詩情の力は政治的なものであるということです。

本展に集められた作品は、芸術的な想像力とともにあるアンビバレントな状況、つまり消えてしまったもの、中断されたもの、満たされないものを抱え込み取り組んでいるものばかりです。ハイデルベルク芸術協会での本シリーズ最後となる今展は、情報を増やすのではなく感覚的な想像力を生み出すことによって、「感性的なもののパルタージュ」(ジャック・ランシエール)を促進することを目的としています。

「シェアすることはケアすること」のキュレーションはMiya Yoshida博士が担当します。

 

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