SMoA コレクション −女性作家特集−

Fuji Face, 2013, glazed terracotta, 42 x 87 x 70 cm. © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn 2024. / Photo: Kei Okano.

出展作家:上野真知子、秋岡美帆、浅岡慶子、朝倉美津子、マグダレーナ・アバカノヴィッチ、イケムラレイコ、石橋幸子、礒邉晴美、伊庭靖子、永林尼、大福唯桂子、岡崎莉望、小倉遊亀、梶原緋沙子、加納凌雲、神山清子、川内倫子、川村悦子、木津本麗、草間彌生、小林清子、坂上チユキ、清水美三子、志村ふくみ、シンディ・シャーマン、ワルワーラ・ステパーノワ、高柳恵里、田中敦子、塔本シスコ、内藤和子、中尾美園、野口小蘋、アレクサ・クミコ・ハタナカ、原萬千子、原田美智恵、平林薫、深見まさ、福田美蘭、益井三重子、三橋節子、安田外喜子、大和美緒、山野千里、山本麗湖、渡辺信子

今期のSMoA Collectionは、当館のコレクションの中から女性作家にスポットを当てた特集展示です。

ここ数年日本のアート界では、ジェンダーバランスの偏りを再確認し、それを是正することに大きな関心が寄せられています。その発端となったのは、「あいちトリエンナーレ2019」における参加作家の男女比が、概ね50:50に設定されたことでしょう。2022年8月には「表現の現場調査団」が、綿密なリサーチに基づき『ジェンダーバランス白書2022』を発表しました。

滋賀県立美術館の状況はどうでしょうか。

2024年3月時点でのコレクションにおける女性作家の割合は、全収蔵作家499人中67人、約13.4%となっています。2020(令和2)年度の国勢調査における人口性比(女性100人に対する男性の数)は94.7、つまり人口としては女性の方が多いことを考えると、13.4%という数字はあまりにも低いと言わざるをえません。2019年における分析によれば、東京都現代美術館、東京都写真美術館、東京国立近代美術館、国立国際美術館といった国内有数のコレクションを持つ美術館における女性作家の割合も、12%から22%と当館と同じような数値であるので、この状況は、日本の美術館全体に見られる傾向だと言ってもかまわないでしょう。

ただ当館の場合は、小倉遊亀、志村ふくみといった女性作家の国内有数のコレクションがあります。それゆえ作品の点数ベースで考えた場合には、全体の約25%と少しあがります。また、企画展では、開館当初から女性作家の個展を精力的に開催してきたという事実があることも申し上げておきたいところです。特に2021年の再開館以降では、開催した7つの個展のうち、2022年の塔本シスコ、2023年の川内倫子、2023年の小倉遊亀、そして2024年の志村ふくみと半分以上が女性作家となります。来年度も、笹岡由梨子の個展を準備しています。

そうした事実があるとはいえ、先に申し上げたように、当館のコレクションが男性優位となってしまっていることは否めません。それは、作家を育てる美術大学や、作品を流通させるアート・マーケットの実状の反映でもあり、またそれらが属する社会の反映でもあったでしょう。しかし、だからといって当館の現状を正当化できるわけではありません。そもそも、アートが、常識や慣習や流行に対して批判的なまなざしを持つことを特徴とするという大前提を思い出す時、それを扱うはずの美術館におけるこの現状は、大きく反省する必要があります。

多様な性の捉え方がある現代において、この展示が「女性作家」という名称を掲げていること、つまり生物学的な性別の二元論に則ってしまっていることに対して、批判もあることでしょう。しかし、来館された皆様、当館を支えてくださっている皆様と、まずは基礎的な情報を共有することが重要だと考えました。私たちは、2021年に、収集方針のひとつに「芸術文化の多様性を確認出来るような作品」を加えた美術館として、今後も鋭意努力して参る所存です。今回の展示を楽しんでいただきますとともに、ご意見等賜ることができれば、大変に幸いです。

出典:滋賀県立美術館作品リスト

 

 

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