国王崩御、女王万歳

Exterior view of the museum

出展作家:Hiba Alansari, Thuraya Al-Baqsami, Monira Al Qadiri, Rosa Barba, Alexandra Bircken, Monica Bonvicini, Leda Bourgogne, Kerstin Brätsch, Tania Bruguera, Ceal Floyer, Galli, Asta Gröting, Roey Victoria Heifetz, Almut Heise, Leila Hekmat, イケムラレイコ, Anne Imhof, Annette Kelm, Conny Maier, Heidi Manthey, Beatriz Morales, Sara Nabil, Helga Paris, Adrian Piper, Lin May Saeed, Karin Sander, Julia Scher, Marianna Simnett, Sturtevant, Rosemarie Trockel, Patricia Waller

キュレーター:ウド・キッテルマン


「チェスに秘密はない、未発見の真実があるだけだ」
 ―サベリ・タルタコワ(1887~1956)

現代における展覧会、そこではスーパーマンが壁に邪魔されて激突し、超大型のハイブリッドのうさぎが母性的な庇護を与え、タツノオトシゴのカップルが昔からのジェンダーロールを入れ替えてみせ、情熱が火花を散らします。フリーダー・ブルダ美術館では、多様な文化の影響を受けてきた異なる世代の女性アーティスト31人による現代アート作品を厳選して展示し、女性が置かれている立場と多岐に渡る作品内容を重点的にとりあげます。

ペギー・グッゲンハイム(1898-1979)は、アートコレクターであり、ギャラリーオーナー、そしてパトロンでもありました。アメリカ人の彼女は伝説的パイオニアであり、マックス・エルンストからマルセル・デュシャン、ジャクソン・ポロックにいたる世界各国のアバンギャルドアートの支援者でした。拡大していくアートビジネスという男性優位の世界で、彼女もまた女性の役割をアンビバレントなものとして経験したひとりだったのです。

今からちょうど80年前、グッゲンハイムはニューヨークの先見的なギャラリー「Art of this Century」で「31人の女性による展覧会」を開催しました。女性アーティストのためだけの場をつくりだし、早い段階からその存在をクローズアップさせたのです。その展覧会のタイトルやコンセプトについて長年のアーティスト仲間として助言していたのが、20世紀美術の重要人物の一人、マルセル・デュシャン(1887-1968)でした。しかし、デュシャンにはもうひとつ、チェスという情熱を注ぐ対象がありました。ご存じのように、チェスではクイーンが最も強力な駒であり、その一方キングは行動半径が限られ、他の駒からの保護を必要とします。

当時の批評は、いやいやながらも賞賛するか、見下した態度で無視するかのどちらかで揺れていました。その批評家たちの頂点に立っていたのが影響力絶大であった「TIME」誌の美術評論家ジェームス・スターンです。彼は「『一流の女性アーティスト』など登場したことがない」という理由でこの展覧会を一蹴しました。それにしても、当時の勘違いときたら!

本展「国王崩御、女王万歳」はこの歴史的に重要な展覧会のコンセプトを引き継ぎ、変容してゆく現在の美学、政治、社会というテーマに取り組む、同じく31人の女性アーティストたちの芸術作品に敬意を表します。登場するアーティストたちが彼女たちの時代の証人であることを本展は示していますが、それは同時に私たちの時代でもあります。この展覧会は、文化産業で盛んなイデオロギー論争から解放され、ここに展示された作品に独自の声を与えることを目的としています。

その目的のために、当館のキュレーター兼アートディレクターのウド・キッテルマンが自身のキュレーターとしての長年の経歴を振り返り、彼にとってもアーティストが立つそれぞれの文脈においても重要な存在である女性アーティストたちを招聘しました。本展では、絵画、彫刻、映画、サウンド、インスタレーションなど、さまざまな分野の作品が一堂に会します。展示の流れに沿って作品が組み合わされ、物語性のある全体的な演出を形成していますが、かといって作品それぞれの強い個性が忘れられているわけではありません。「この展覧会は、作品に声を与え、作品の持つ力と意義を信頼して、時に声高に、時に静かに自己主張させるものです」とウド・キッテルマンは述べています。

出典:フリーダー・ブルダ美術館

 

Museum Frieder Burda(フリーダー・ブルダ美術館)
Lichtentaler Allee 8B
76530 Baden-Baden

tel. +49 (0) 7221 398980
https://www.museum-frieder-burda.de/

開館日時:火曜日~日曜日、午前10時~午後6時