別の視点から

Red Tree, 2013, tempera on jute, 70,5 x 50,5 cm. © Leiko Ikemura and VG Bild-Kunst Bonn, 2024.

アーティストのカーリン・クネッフェル、古代ローマ研究者のバルバラ・フィンケン、そして美術史家のカトリン・クリングゼア=レロイとユリア・フォスは、フランツ・マルク美術館のコレクションを今までにはない方法で見ていきます。通常とは異なった刺激がくわわることで、「Der blaue Reiter(青騎士)」や「Brücke(ブリュッケ)」の画家たちの、よく知られているはずの作品に新たな視点を見出すことができるでしょう。

「ドイツ表現主義について何か新しいことが言えるだろうか?」ミヒャエル・クンプフミュラーのエッセイ「見ることの幸福とそれに伴う作品について」での言葉です。

青騎士とブリュッケの作品を中心とする美術館のコレクションでは、展覧会が開催され、コレクションが新たに紹介されるたびに、この問いが浮上します。美術研究の分野で新たな問いに取り組み、美術館の来館者に新たな展望を提供するためには、どのようなアプローチが必要となるでしょうか。

作品が制作された当時スキャンダルを引き起こし、フランツ・マルクとワシリー・カンディンスキーが出版社を見つけて青騎士の年鑑へ資金提供をするために苦戦しなければならなかったとは、今日ではなかなかイメージしにくいでしょう。モダニズムの考え方は物質的価値よりも精神的価値を優先し、アカデミズムやヨーロッパ中心主義的な偏見を批判し、物事のオリジンを探求するものです。この重要なマニフェストで表現されている考えをくわしく見ていけば、社会に対する根本的な批判という点で、アヴァンギャルドの潮流を国際的に結びつける思想へと行きつきます。それは長らく受け入れられてきた既成のヒエラルキーを打破することと同義であり、男女の関係や、工業化とテクノロジーに支配されつつある世界における「自然」な生き方への欲求にかかわる批判となって表れます。

「別の視点から」展は、型にはまらないアプローチで新たな視点を切り開こうとするものです。4人のキュレーターが招かれ、フランツ・マルク美術館のコレクションのなかから、現在それぞれの研究や芸術制作で取り組んでいる側面に焦点を当てます。旧来の美術史的な観点からではなく、むしろ「外から」の視点です。

画家のカーリン・クネッフェルは、自身のシリーズ「女性の顔、子供の頭」の写真と、表現主義時代の母子像、すなわちヴィルヘルム・レームブリュック、パウラ・モーダーソン=ベッカー、マックス・ベックマン、フランツ・マルク、オットー・ミュラーの絵画や彫刻を組み合わせています。

古代ローマ研究家でジェンダーとファッションの研究者でもあるバルバラ・フィンケンは、エルゼ・ラスカー=シューラー、オットー・ディックス、アレクセイ・フォン・ヤウレンスキーらの作品にコメントを行っていますが、これはフランス革命以降のファッションがいかに破壊的なものであったかということを論じた彼女の最近の著作にもとづいたものです。

ヒルマ・アフ・クリントの作品の専門家である美術史家ユリア・フォスは、クリントの水彩画とワシリー・カンディンスキーの絵画を並置します。二人の画家が実際に顔を合わせることはありませんでしたが、両者とも抽象絵画へといたる時期のパイオニアであり、1910年頃、同時期に絵画を描いていました。

フランツ・マルク美術館の館長であるカトリン・クリングゼア=レロイは、植物の精神性についての章を寄稿しています。その中心となるのはヴォルフガング・ライプの作品(花粉の山/Pollen Mountain)であり、パウル・クレーの絵画(夜間植物の成長/Growth of night plants)と対峙するように置かれています。これらの作品は、イケムラレイコの書道を思わせるような樹木の絵や、ペーター・ハンドケの自然に関するノートのように、植物が持つ霊的な力を十分に認識した、植物に対する鋭い見方を強調するものだと言えるでしょう。

テーマ別に構成された、展示室のなかで完結するこのミニ展覧会は、常設コレクションの一般的な展示と一体化しつつも、従来の美術館内の順路の流れを崩すことで、来館者に思いがけない視点や見方を提示するものになっています。多数の貸し出し品で構成される大規模な展覧会ではなく、普段はない刺激を取り込み、物事を「外から」見る方法について新たな洞察を得ることを目的としています。

出典作家:Max Beckmann, Otto Dix, Peter Handke, イケムラレイコ, Alexej von Jawlensky, Wassily Kandinskys, Paul Klee, Hilma af Klint, Karin Kneffel, Wolfgang Laib, Else Lasker-Schüler, Wilhelm Lehmbruck, Franz Marc, Paula Moderson-Becker, Otto Müller

キュレーター:Cathrin Klingsöhr-Leroy, Karin Kneffel, Barbara Vinken and Julia Voss

出典:フランツ・マルク美術館Artfacts

 

 

Franz Marc Museum(フランツ・マルク美術館)
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