この展覧会では人類が生み出した技術を用いた人類自身による人類の殲滅という事柄を取り扱います。人類を根絶しようとするすべての戦争におけるアイデンティティや倫理、軍事力の利用に関してあらためて議論を提起するのが狙いです。
出典作家:
アンゼルム・キーファー(ドイツ)
オリヴァー・ピエチュ(ドイツ)
ジョラム・ロゾフ(イスラエル)
ラリー・アブラムソン(イスラエル)
吉田重信(日本)
シリン・アベディニラド(イラン)
ヴィア・レヴァンドウスキー(ドイツ)
橋本公(日本)
エレズ・イスラエリ(イスラエル)
グリ・シルバースタイン(イスラエル/イギリス)
ギラド・オフィール(イスラエル)
イケムラレイコ(日本/ドイツ)
ミヒャ・ウルマン(イスラエル)
本展の着想となったのは「Burning Conscience: The Case of the Hiroshima Pilot Claude Eatherly(ヒロシマわが罪と罰 原爆パイロットの苦悩の手紙)」という本であり、元空軍パイロット クロード・イーザリーとドイツ人哲学者 ギュンター・アンダースの往復書簡をまとめたものです。
偵察任務の1時間後、広島への原爆投下にゴーサインを出したのがパイロットであったイーザリーでした。彼はそれが何を意味するのかその時点では理解していませんでした。任務から帰還して原爆が与えた壊滅的な影響を知ったとき、イーザリーは自らが果たした役割を受容することはできず、日常生活を続けていくことができなくなりました。イーザリーは英雄として扱われ報道されましたが、彼自身はその後精神に変調をきたし、完全に回復することはありませんでした。自殺を図ることも数度ありました。
この本のテーマは読者の興味をそそると同時になかなか難しいものでもあります。アンダースとイーザリーが議論している事柄は現在もなお、二人が存命中の当時と同じくらい重要なことであり、彼らによる洞察は、核による虐殺という大惨事を繰り返さないための警告として役立つはずです。同じことが起これば今度こそおそらく「黙示録的」なものになるでしょう。この言葉は神学的・哲学的な意味あいで借用したのではありません。その最も言葉通りの意味で人類および世界が全滅することになるということです。
本展「The Case of Hiroshima」は、アイデンティティ、道徳と良心、制限なく膨張した権力の濫用といった事柄に関して論点を提起するものになるでしょう。また、個人および集団の人命に関係する重大な決定、それを下すことについての個人・集団の責任ということも扱います。1945年に初めて原爆が投下されて以降、戦争は日常的な脅威となり、最悪の事態が起こるのではないかという不安がわれわれ文明社会をさいなんできました。ほんの一瞬理性を欠けば、 二度ともとに戻れない恐ろしい間違いにつながるかもしれない。そんな恐怖に世界は絶え間なくさらされています。
良心と知性は切り離すことができるか?——哲学者ジャン・ジャック・ルソーはこの問いに対する答えはノーだと信じていました。私たちはあらゆる戦いを達成し、成功と勝利をつかみ取るように促す知性と、望んでいる成功への途上、善悪を区別することを求める良心との間で日々揺れています。他人の存在とその権利に対して謙虚に寛容と慎みを表明し続けると同時に、自らの行動を正当化するのに知性を利用できるのかという問いは、無視することができない問題です。
従前の展覧会と同じくMuseum on the Seamでの本展は、未来の世界平和のため、慎み深く集団的な責任感をもって行動していくことの重要さを訴えかけます。これらの行動をわれわれが行っていくことで、環境へ影響を与えていくことを願っています。
Source: Museum on the Seam - socio-political contemporary art museum
Museum on the Seam(ミュージアム・オン・ザ・シーム)
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